ピアノ・アドヴェンチャーは、日本で受けない!?(2−1)


去年の大晦日は、前回の記事に登場した、日本に、米で最も人気な教材、「ピアノ・アドヴェンチャー」を広めた、ACM公認指導者の井上悦子先生の大阪天王寺にあるピアノ・スタジオにお招きいただき、関西を拠点に活躍する先生方と、日米のピアノ教育について色々とお話する事が出来ました。

その時に上がったトピックを、数回に分けて書きたいと思います。

写真(上)左から:オレゴン時代の戦友、Michiko Farnsworth先生(ACM公認指導者予定!?)、私、杉野みゆき先生
写真(下):右=井上悦子先生

井上先生ですが、この度、日本初の「ピアノアドヴェンチャー公認指導者」になられました!!!ブログ記事:https://ameblo.jp/atelier-canon-hanaoto/entry-12437086461.html
おめでとうございます!!!!
右:井上先生/作者のランディ先生/キム先生




井上先生と日本の実情などを色々お話しさせて頂きましたが、「はじめてのピアノ・アドヴェンチャー」が、日本の一部の先生にとっては、まるで遊びのようで、譜読みマスターにならないという先入観があると聞きましたが、ものを習得するのに、「遊びを通して学ぶ」というのは、特に初期の段階では、寧ろ、望ましくもあり、「遊び=悪」ではないということが、科学的な統計/Evidenceからも窺えます。

以下に参考になる章をコピペします:

『やり抜く力』(アンジェラ・ダックワース, 神崎 朗子 著)より 引用:P.148

スキルは「数年ごと」に「3段階」で進歩する 
心理学者のベンジャミン・ブルームも、同じ結論に達している。ブルームはスポーツや芸術、科学の分野において、世界で活躍する120名の人々に加えて、その両親やコーチや教師たちにもインタビューを行った。その研究結果のなかでもとりわけ重要なのは「スキルは3つの段階を経て進歩し、各段階につき数年を要する」ということだ。 

興味のあることを見つけて掘り下げていく段階を、ブルームは「初期」と呼んでいる。この「初期」に励ましを受けるのはきわめて重要だ。というのも、初心者はまだ本腰を入れて取り組むべきか、やめるべきか、決めかねているからだ。ブルームらの研究でも明らかになったとおり、この段階でもっとも望ましいのは、やさしくて面倒見のよい指導者(メンター)を得ることだ。そのような指導者たちの最大の特徴が、最初の学びを楽しく、満足感の得られるものにしたことである。入門のごく基礎的なことは、ほとんど遊びを通して学ぶ。最初のうちは学ぶというより、ゲームのようなものだ。 

また初期には、ある程度の自主性が尊重されることも大切だ。勉強や習い事の学習者を対象に行った長期的研究によって、威圧的な両親や教師は、子供のやる気を損なってしまうことがわかっている。いっぽう、自分の好きなことを選ばせてもらえた子供は、ますます興味を持って取り組み、のちに一生の仕事として打ち込む確率が高くなる。 


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日本のテキストブックは、どれも急に難しくなるものが多いですが、「楽しい」と感じれるためには、「出来るようになれること」(注:先生や親が芸のように手取り足取り教え、表面的に出来るのではなく、本人が自力で難なく出来ることを指す)も不可欠で、満足感も倍増し、更に「小さな成功体験を沢山積ませること」も大切なので、無理なくクリアしていける課題で進めていけるのが、「急がば回れ」で、確実に身に付きます。
急に難しくなって、「出来ないから嫌!」とならずに済むのも魅力ですね✨

ピアノアドベンチャーの場合、遊びに置き換えながらも、導入期に重要な基礎形成/アカデミックな要素もあり、ずっと使ってきた感じでは、寧ろ、苦い薬をいかに甘くし飲ませるかの工夫が素晴らしいです。日本で音大を出た指導者の子供達を米で複数指導した際、先生でもあるお母さん方が口を揃えて、(楽しいのに!)内容が広く深いと感心した様子で、日本にもこんなのがあったらなと言ってました。

また、日本のコンクールでは、八分音符や細かい音符があるものがお題になるから、使えないと感じる先生もいらっしゃるとのことですが、確かに、はじめてのピアノ・アドヴェンチャー(ブックABC)が終わった次のレベル1にも、まだ八分音符がなく、次の2Aになるまで出てきません。
しかし、どの教材もそうですが、全ての学習者にとって完璧というものはなく、工夫して使うことで、生徒一人一人に、より効果的に使えるのだと思います。

例えば、自分の生徒Eは、今回のPiano Guild Auditionで4期の作品からそれぞれ計4曲、八分音符のある作品を演奏する予定で、間に合わせるべく、まだ八分音符の出てきてないレベル1と同時進行で、レッスン開始後3ヶ月目辺りから、八分音符の出てくる次のレベルの2Aもさせてます。(大半は、レベル1が終わってから2Aをさせますが、この生徒は、以前にピアノを習っており、八分音符が正確に難なく読めないのに、無理してABRSMのGrade2を受けた経験があります。八分音符を確実に習得するには、レベル1をしっかりやるのが早道なので、いきなり2Aをさせるのは、応急処置に過ぎない状態に陥ると判断し、いきなりスキップしてレベル2Aから使いませんでした。更に生徒によっては、同時進行せず、じっくりやります)

また、Piano Guild Auditionなら、八分音符の出てきてない選曲も可能なので、同時進行させずとも、今本人が取り掛かってるレベルでエントリーさせられるので、焦らずピアノ・アドヴェンチャーをじっくり使うことも可能です。

しっかり、四分音符&休符/二分音符&休符/全音符&休符/を沢山やって音価が鍛えられてきた段階で、八分音符の基本に入るのが効果的です。八分音符が出てこない曲は退屈では?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、レベル1に八分音符が出てこない代わりに、ペダルや表現法は勿論のこと、ピアノの鍵盤の上から下まで使い、シャープとフラットが出てきますので、生徒は、音色を楽しみながら、繰り返し似た音型の曲を「飽きずに」取り組めます♫

楽譜だらけ❣️でも、楽し過ぎてBig smile❣️

このように、使い方や工夫次第で、日本でのコンクール等にも備えられるのではないかと思います。(このやり方で、成果=Evidenceが出てるため、生徒Eも親御さんも満足しています。)

難点を上げるとすれば、生徒/特に親御さんの中には、「難しい曲への執着がある」方もいて、難しい曲をやる=上手になれる(過度な背伸びが与える様々なマイナス点や譜読み力強化が出来ない=上達停滞に陥ると分かってない)という誤解からか、簡単なものを沢山させるのに、抵抗を感じる方がいて、それを納得させる指導者の負担というのがあります。・・・勿論、直ぐに納得出来る方もいますが、やはりEvidenceの提示が効果的です。自分の場合、育成してきた生徒の上達度を、動画で成長記録として残しています。

また、その他の難点として、通うのに荷物が重くなることと、置く場所や購入&処分の手間。(余談ですが、OMTAで参加した勉強会で、iPad を導入したレッスンというものがありましたが、時代と共に進化していくのかもしれません。)そして、課題を考える側は、レベル1と2Aを上手い具合に調整しながら、生徒の状態と先を読んで脳をフル回転させないといけないことなどですが、生徒によっては、プラス面の方が多い場合、このマイナス点は、そこまで大変な事ではありません。

日本でされるコンクールや検定試験の条件に、Piano Guild Auditionのように、八分音符がない難易度の曲でも参加可能なレベル/部門等がないとなると、苦しくなる指導者/生徒さんも出てくるのでは!?とお察しします。

次は、「失敗」についてのトピックを書こうと思います。

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