「ギルド・ピアノ検定試験」の魅力とグリット!

前回のJournalで、ACM(American College of Musicians)=米国ピアノ指導者NPO団体ジャパンとの出会いについて書きました(ここから読めます)が、今回は、この団体主催の、日本にいながら体験出来る、米の個を認める教育、「米国ギルド・ピアノ検定試験」について書きたいと思います。

公式サイト:https://www.pianoguildjapan.com/

ギルドはアメリカでも有名ですが、米時代に私自身は、アメリカで一番有名な、MTNA(全米音楽講師協会)の会員だったので、共通する部分や異なる部分が分かるように、先ず、それ系のピアノ検定試験(Syllabus)/フェスティバル/コンペの内容や趣旨、求められる点などに付いて書きたいと思います。

自分が長かったケンタッキー州のKMTAも、3年住んだオレゴン州のOMTAも似通った部分が多く、MTNAにある基準を元に、それぞれの州ごとに試験内容を選定してると思うのですが、スケール、カデンツ、アルペジオは必須で、また、4期の作品それぞれが選曲され、それぞれの時代背景を理解し、時代毎の特徴を弾き分ける事が求められる傾向で、KMTAでは、演奏だけでなく、楽典の筆記試験もありました。以下、筆記試験の写真です↓


OMTAは、筆記試験自体はないものの、審査員が生徒と口頭で、例えば、「D Majorの平行単調(Natural/Harmonic/Melodic)を弾いてください」と言う感じで行う、Orally的な審査で、音楽用語やTheoryの理解度がチェックされ、更に曲名と作者名と時代、何調で何形式かも、レベルが上がるとお題になるため、生徒は、演奏前に自分で説明する感じでさせたりもし、楽典や理論を理解してるかなどが実地試験に組み込まれたスタイルで行われてます。

バロックの作品から必ず一曲選び、それと異なる時代の対照的な作品を選ぶのがお題のコンペやフェスティバルというのもよくあると思います。

KMTAとOMTAでのバロックのコンペやSyllabusでのバロックの作品を演奏する際の決まりは、リピートを行うことでしたが、バロック音楽は、リピートで変えて弾くことを審査員は期待する傾向で、これは生徒が時代背景やバロック音楽が何かを理解するのに効果的でした。なので、バッハは、原典版を使用し、アーティキュレーションとリピートの際のアレンジ等を生徒と一緒に考えたりしてました。これも良い勉強になったと思います。さらに、トロフィーやメダルなんかも貰えることが多かったです。(*最初の写真は、自分の生徒たちのSyllabus合格のご褒美メダルですが、これらは、私個人がオーダーメイドで生徒名を入れて作ってあげたものです。KMTAのように、Syllabus(検定試験)をパスしたりした際に、毎回メダルやトロフィーというのがOMTAではなかったからです。OMTAでは、ソナタ&ソナチネコンペティションかバロックフェスティバルで入賞しない以外は、Syllabus(検定試験)が年に2回(自分の生徒は、私が2つの支部の会員だったので望めば年4回)、その他のフェスティバルでWinnerか試験の合格不合格に関係なく、10回参加達成毎にトロフィー(だんだん豪華になる!)授与権がいくというものでしたが、これは、やはり何回も挑戦する事への応援の現れで、後で触れる「グリット教育」に通づるものがあります。)

下の写真は、2017年のOMTAの年初め恒例の「バロックフェスティバル」の入賞者の演奏会&表彰式です🎶メダルは、バッハの顔でした✨(毎年変わります🎶)
年初めに、ケンタッキーもオレゴンも恒例のバロックフェスティバルやコンペがされ、バロックを重視していました。(おそらく、全米全体でこの動きがあるのだと思います。。。年明けは、原点に戻りバッハみたいな🎶)

以下は、OMTA毎年恒例の、ユージン市のオレゴン大学(OSU)で開催される、ソナタ&ソナチネコンペ(2017年秋)の写真です🎶
*アメリカ時代(特にオレゴン時代からブログ開始したので、その頃のでよければ、色々なイベントの写真や記事が、ここで読めます🎶

ただ、特に導入期の小さい生徒の中には、バロックが大の苦手(驚くまでもなく、対位法とかに不慣れで取っ付き難いので、割と多いですね)というケースがあり、そうなると、試験が苦に感じてしまう傾向でしたが、ギルド試験のElementary(初級)の最初の級(A)ですと、導入レベルピアノ教本の曲を弾いても可能です!従って、どんなレベルの子でも前向きに試験が受けられるのではないかと思います。これは、MTNA系の複数の経験した事のある支部にはないオプションです!本人ペースで受講出来る感じがいいですね🎶

更に、課題曲がある程度指定されていて、どんどんレベルを上げる試験内容のものですと、級を上げることに集中し過ぎ、実際には、本当の実力が付いていってないケースもよくありますが、ギルドなら、無理なく少しずつハードルを上げて望めたりもして良いと思います。

1曲から20曲までのオプションがあるというのも、参加しやすいですね。更に、2回目以降の試験をパスした際に、メダルやトロフィーがあるのもアメリカ的です!(これも生徒によっては、かなり効果的でした)

ギルドは、正に「米の個を認める教育」を体験出来る印象を受けます。
アメリカにいれば、こういったスタイルの教育法は、当然ながら至る所にあり、逆に、MTNA式の試験内容の方が、そんな教育環境ばかりの中では、少々お堅く(!?)締まっていいとも取れましたが、ギルドは、自由にマイペースにも出来て、課題が出来ない=受けれないというプレッシャーが少なく(導入の段階では無し!)、無理なく受けられそうですね。But!世界的に活躍するピアノスト達も複数受けていた、由緒あるピアノ検定でもあります。リストが公式サイトで確認出来ます:https://www.pianoguildjapan.com/acm

日本の教育から考えると、ギルドの最大の魅力は、「個を認める」≒「Diversity(多様性」ではないでしょうか✨

右倣え右ではなく、得意な事を伸ばすのもよし、不得意な部分を強化するもよし、それぞれのその時その時の目的に沿って、指導者も生徒も、それぞれの目的や信念を持ったやり方で受け入れてもらえ、Comment/Feedbackをトレーニングされたエキスパートから貰えるのは、最低年に2〜3回くらいはあってもいいほどです。どうしても、先生や親が言ってる事は、なあなあになったりで聞かなくなることもありますが、審査員から同じことを言われたりすると、なかなか聞いてくれなかったことが、聞けるようになることもあります。

MTNA系のコンペや技能検定試験のような感じにしたければ、そういった選曲も可能ですし、バロックはまだ苦手という生徒や、若しくは、クラシックが苦手な生徒や、ピアノを始めて間もない生徒の場合、導入のテキストブックの曲でも良いので参加がし易く、早い段階で試験を受講/経験出来るのもいいことですね!最初の最初のレベル以降は、好きな曲を弾いてもOKだが、どんな曲を弾いてもいい代わりに、弾く曲の全ての調のスケールとカデンツは必須なのが、学びにもしっかり繋がり、合理的でいいですね。自分は、アルペジオも生徒によってはさせる意向です。(したければよしの乗り🎶この辺りも、柔軟性があっていいですね〜)

先生や本人次第で、望みさえすれば、かなりハイレベルな内容でも受けれるのが嬉しい点でもあります!
一人一人のそれぞれのペースでハードルが上げていける教育は、伸びる子は猛スピードで伸ばせるし、ゆっくりペースに少しずつハードルを上げていく方が無理なく適切な生徒にとっても、受け入れてもらえる公式の場があることは素晴らしいことだと思います。

更に大人の生徒まで受けれる点、また、アメリカに住んで、現地で受験するのと同じ感じで、通訳もなしで審査員と個室で2人きりで行うのも良いですね。(但し、万が一のために、ACMの英語が出来る先生がスタンばってるそうなので、そこまで不安になる必要もなさそうですね。)
国際化が猛スピードで進み、英語を学びたい生徒が多い現在、「海外疑似体験」が出来るのも、英語への興味や必要性を感じれ、やる気促進のよいきっかけにもなるかもしれませんね。興味や必要に迫られる機会は、日本では貴重ではないかと考えます。通訳なしで受講する経験も、きっと本人の自信にも繋がる事でしょう。国際化社会になってくると、益々、米の個を認める教育の需要も高まるのではないでしょうか。

また、先生までもが審査される点もよいですね。
指導者は、独り善がりになりがち。。。時には、第三者からのFeedbackは貴重です!
・・・保護者も子育てで独り善がりになりがち、、、なので、こういった場に参加することで、他の励んでる生徒や保護者の方達の中に入れると、親にとっても刺激になると思います。

実際に成長出来る事が最ものやる意義ではないかと思うので、国内外の履歴書に書けるのは、おまけではないかと思いますが、内申点にも当然プラスではあると思います。(色んなレベルを合格して、沢山書いた方が、アメリカ的には有利です。やはりグリットも関係するからでしょうか)

ギルド試験に関しては、来年3月に経験したら、また新たに色々感じたり、見えてくることもあると思うので、またその時にでも書いていければと思います。

この手の試験の是非についてですが、もう少し上手になったらと先延ばししたり、一回くらい、高いレベルを受ければ良しというのもでもありませんので、それについて「グリット」を交えた視点から、少し書きます。

2016年に、アンジェラ・ダッチワース氏の著書「Grit(グリット)=やり抜く力」が話題になりましたが、彼女は著書で、グリットの鍛え方にも触れており、課外活動≒ピアノなどの習い事でグリットを鍛えられると書いてます。”私も多くの親たちと同じように、バレエや、ピアノや、フットボールなど、体系的な練習が必要な課外活動は「やり抜く力」を伸ばすのに効果的だと思っている。”(引用:byアンジェラ・ダッチワース)

グリットの強い子供の傾向として、試験やコンペ(発表の機会)などを多くこなしてるとう統計も出していましたが、指導現場から見ても、それには納得で、例え嫌がる子でも、親や先生の周囲の大人が前向きに、励ましてやり、何度でも経験させてくうちに、嫌がってたのが嘘のようになり、グリットが鍛えられた実感を得れた生徒が多かったです。

グリットに関しては、日米の一般教育の差も影響しているように見えますが、アメリカは、大学を「出ること」が厳しいので、試験をパスすれさえすればいいという訳にいきません。しかし、大学を出て、そこからが「本番」と考えた場合、出るのが難しい方が後々社会に出ても役立つのではないのかと、個人的に思います。勿論、アメリカは、超格差社会なので、下はとてつもなく低く、でもトップクラスは、優秀な人は、世界基準でもとてつもなく優秀です!グリット数値が高いのも頷けます。

また、アメリカには、学習塾が浸透していないです。それよりも、どれだけ楽器かスポーツの習い事をしっかりやり抜いたかで、大学に入る前の内申点が左右する傾向です。よって、「ピアノなどの習い事」への取り組み姿勢が、審査のポイントとなります。アメリカで指導した日本人家庭の子供達で、検定試験や発表の場やコンペを前向きに受け、失敗しようが、落ちようが、負けようが、泣こうが、「失敗は成功のもと!」「次は上手くやるぞ!」と、前向きに何度でも挑戦した生徒たちが、本帰国後、名門校に入った後も、どんどん向上していってる様子からも、例え、日本に住み続けるとしても、グリットを鍛える教育内容の価値に変わりはないと言えるのではないかと感じます。

単に国民性の差がグリット数値の日米の差とは言い切れず、文化的な面では、強いて言えば、傾向的にアメリカ国民は「楽観さ」がある点と、教育環境が異なることも理由になっているのではないかと、実際に教育に関係する仕事を米でしてきて感じます。

なので、まだ早いとか、もっと上手になったらと先延ばししたり、面倒だからとか、受験料の出費を渋るより、やらないロス(loss)を考えるべきです。
脳科学者が、お金の最良の使い道は、「経験」と提唱してますので、これも立派な経験値となるので、投資価値ありではないかと思います🎶

また、言うまでもなく、目標がないと向上出来ませんよね。これは、旅するにも目的地を設定しないことには、スムースに進めなるのと同じで、目標設定が出来て良いですし、人に出すとなると、腕が上がります。例えば、料理もそうですが、そういう機会を多く持ってる人が断然上手です。(これはある意味、私たち指導者にも通ずるものがありますよね。自分も生徒がいい意味で実験台となって、何度も励んでくれたからこそ、自分の指導力のサプリメントになり、向上してこれたのだと感謝してますが、指導力が上がる事は、生徒にとっても良い事=Win-win✨日本でもこうなれたらいいな✨)

追い込み効果はもちろん、その時にのみ磨かれてくものがありますので、どんどんやって上手くなってくものだと思うので、「まだ早い」ではなく、「今こそやろう」に変換出来るのが良いですね。ギルドなら、習い始めたばかりの生徒でも参加可能な点も魅力です🎶
先生や親以外からのFeedbackは大切です。

それに、ギルドの受験料は、国際レベルの試験の割にリーズナブルです。非営利団体なので、先生方がボランティアで働いたりするところもアメリカ的ですが、やはりMTNAの頃もそうで、生徒の知らないところで、先生方が実に雑多なことから様々なことをやってるんですよね。こういった事の積み重ねは、生徒と先生の絆をも深めてくれ、ピアノを上達させるにも、長続きも大切ですから、長期戦に備えるべく、良い栄養補給となりますね。

但し、アメリカでは、試験やコンペの機会が日本の比にならないくらい多いので(ピアノ以外の習い事も同じ傾向)、それもあり、アメリカの平均グリット数値が、日本の平均を上回るのかも知れません。あと、「楽観さ」が日本社会の方が低いように感じます。
(*グリット数値が測れます:https://walkingelephant.blogspot.com/2017/09/grit.html

失敗=ダメ ではなく、失敗=当然=成長のチャンス と前向きになれるのが理想で、試験や公式の場での失敗こそ、成長の大チャンスだと思うので、上手くいった喜びを味わうのも重要ですが、それと同時に失敗の価値も知って欲しいです。(人の痛みの分かる、思いやりの心が育まれたりします)この両方を定期的に経験するとなると、どうしても場数を踏む方が、確率的にその機会に多く恵まれますので、今後、日本でどう補えるか、何か考えないとと思っています。(生徒からの失敗を乗り越えた先の喜びの生の声などを交えて、改めて記事を書こうと思いますが、発表の場を設けること自体が難しいので、他の先生方と合同!?とか出来たら楽しそうです。一緒に何か考えませんか?!特に私は、未だ生徒は10人未満ですので、発表会するにも人数が少な過ぎます😭なるべく無駄を省いて、お金も最小限で「発表の場」を設ける方法を模索中です。どこか30人程度の人数でもいいので、レンタル料がリーズナブルで、グランドピアノがある場所など、ご存知の方がいたら教えてください。(>人<)

・・・プッシュしたくない反面、ギルド試験は年にたったの一度きりなので、生徒には逃さないで欲しいというのが、私も他のACMの先生方もきっと同じ想いなのでは!?と思います。

出ました!はい成果が感じれました!とインスタントに目に見えた結果が、必ずしも毎回確実に即実感出来る事もないこともあるため、ただ「いいので受けましょう!」だけだと、納得して貰えるには情報不足ですよね。・・・参加の利点と、不参加のLossをしっかり指導者が伝えることも(耳が痛いかもですが)、指導者側もグリットを持ってしていくべきかと思います。(簡単なことではないと理解しますが、他の先生方とも、この辺りもアイデアなどシェアし合えたらと思います)

最後に、「アメリカ式」を謳ってますが、「アメリカ式」=どこにも属さないことも受け入れられるニュアンスがあると思います🎶
なので、ヤマハのグレード試験の良い部分をギルド試験を活用しながら、取り入れたりも全然ありだと思いますし、完璧な組織自体存在しないので、柔軟性を持ち、色々経験して得た中から、優れてると判断したものは、日本式と考えられるものでも、英国式の英国王立ピアノ検定(ABRSM)でも、なんでも良いと感じたものを、生徒一人一人や必要に応じて取り入れたり出来るのも良いですし、信念を持った自分流でやり通すスタイルが認められるのが、アメリカ式の一面でもあるのではないかと思います✨

私も、外国人(Asian)指導者として、ネイティブから程遠い英語でも、学歴や人種を超え、アメリカで受け入れてもらえ、実力を評価して貰えたおかげで、「自分のスタイルでいいんだ!」となれ、大胆な指導法を試みることに躊躇せず、ユニークな成果のある指導法が生み出せたのだと痛感すると共に、個を認めるDiversityなアメリカ社会だったからこそ導かれたのだと、その気持ちが帰国した今になって、更にに強くなっています✨

このJournalも、私(Made in USA ピアノ教師)のバックグランドからの、独断的見解に過ぎませんが、少しでも参考になれたら嬉しく思います!!!

では、好き放題書いてしまいましたが、お読み頂き、ありががとうございました!!!